宮沢賢治の作品の中でなにがいちばんすきかと聞かれたら、とても迷う。「銀河鉄道の夜」も「風の又三郎」も「なめとこ山のくま」も「セロ弾きのゴーシュ」もどれもほんとうにすきで、それぞれにはそれぞれのすきの理由があって何時間でも話せる。
「グスコーブドリの伝記」はすきという観点から別次元のところにある。特別なのだ。
伝記だから、幼少期から時系列で展開していく。ブドリは、ではじまる。静かにはじまり、静かにおわる。ブドリの感情はほとんど描写されない。起承転結や大きな盛り上がりはなく、そっと終わる。
泣きたくてたまらないのに、泣かせてくれない。でも、心の空模様は、突然やってくる夕立のように、激しく、ドラムを叩いているようにその声はかきけされる。
「グスコーブドリの伝記」はそんな物語。
2時間超の長いお話です。じっくり聴いてみたい方はYouTube沼尾ひろ子の朗読の世界をのぞいてみてください。
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