「一陽来復。おまえにも時節が来たらしいね。劉備や・・・心の支度もよいかえ」
時節。三花一瓶の中で、「時」の描写が際立っている。
蓆機が奏でる単調な音。がたん・・ことん・・・繰り返し音は紡がれる。そして、いつしか大きな蓆が織られる。そして、それは必要でなくてはならないもの。桃園も、季節は繰り返し繰り返し蕾をふくらませ花萌ゆる。生命の営みはかわらない。でも、そこに人の「気」が加わると、萌ゆる色や香りが豊かに満ち満ちる。
母は、蓆機を繰りながら、「時」が満ちるのを微塵も疑わず待っていたのであろう。優しさゆえ惑う息子の眠る「志」を激しく揺り起こし、真の目覚めの「時」を待つ。なんと強く気高く慈愛に満ちた母であろう。
三つの花がひとつの瓶に。劉備。関羽。張飛。母は、一生一度のこの「時」を盛大にもてなす。花真っ盛りの桃園で。
設けられた祭壇の前で、劉備、関羽、張飛の三人は、三体一心、三人義兄弟の約束を誓う。義盟。天下の塗炭を救い、国土に公権を確立し、永遠の平和と民福を計る。
「武人には武道があり、聖賢には文道あるごとく、商人にも利道があります」
商人 張世平は言う。理想だけでは国家の大計は成し得ない。経営の智。
そして、「時宜を得ている」と言って、五十頭の馬、鉄一千斤、獣皮織物百反、金銀五百両を提供した。
天の時。人の和。さあ、地の利がこの後、どのようにたぐり寄せられるのか。来月!
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