最後の1分。私の「人魚姫」

「朗読が好きで・・・」と言って聴きに来てくれて、ついつい長く話してしまう。やっぱりうれしいですよ。「さがしてたどり着きました」なんて言われたら、ここがどういう場所で、どうして私が朗読をしているのか、どんな朗読をしているのか、などなどたくさん教えてあげたくて、私、私をたずねて来てくれる方に、その分のおかえしをしてあげたいの。そして、一期一会でなく、ここに来れば、私に会える、私の朗読が聴けるって思って足を運んでもらえたらうれしい。そんな場でありたい。今、ここに来られない方には、オンラインでお話しできるし、私の朗読の世界を少しでも味わっていただけたらうれしい。朗読をしているとうれしいことがいっぱいだわ。

今日は、アンデルセンの「人魚姫」を朗読しました。人魚姫は、少女の頃、あこがれのお姫さまだった。お話の主人公としてではなく、海の中にいるお姫さまにあこがれていたんですね。神秘的でロマンチックで、私も人魚姫になりたかったのだ。よく、クレヨンで絵も描いていたっけ。でも、アンデルセンの人魚姫は、とても悲しい。一途で、一心で、信じる心を持ち続けた。王子様への思いを物語にしながら、人魚姫がほんとうに欲しかったのは、「無」への賛美より「永遠」の安らぎだったのだと思うのです。純粋にその瞬間まであきらめずに。そして、それすらもあきらめた時、手にしたもの。ま心を尽くしてきたことをわかってくれていた、その時初めて泣くことができた人魚姫。悲しいお話に終わらせたくない。けれど、ハッピーエンドなのか。最後の1分を朗読する時、こみあげる感情を必死におさえる。私の「人魚姫」。

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

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