「湯河原タイムトリップ〜日本文学の世界へ」。
湯河原にゆかりの文豪たちの作品、今回は芥川龍之介と夏目漱石を朗読します。
〜12月の朗読 『芥川龍之介』と「夏目漱石』〜
12月3日(土) 芥川龍之介
芥川は心身の衰えを癒やすために、1923年に湯河原へ湯治に赴きました。
今回朗読する2つのお話は、湯河原にゆかりのある「トロッコ」、クリスマスのお話ではじまるこの時期にぴったりの「少年」をです。
第1回 「トロッコ」1922(大正10)
湯河原出身のジャーナリスト力石平三が、幼少時代に、熱海軽便鉄道が人車鉄道から軽便鉄道への切り替え工事を見物したときの回想記を芥川が小説にしたものです。
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『小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった。良平は毎日村はずれに、その工事を見物に行った。ある日、土工と一緒に、トロッコを押すことになった。良平は最初は有頂天だが、だんだん不安になって・・・』
第2回 「少年」 1924(大正12)
主人公の堀川保吉の少年時代の回想記。芥川自身の少年期を描いたとされる作品です。
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『昨年のクリスマスの午後、堀川保吉は須田町の角から新橋行きの乗り合い自動車に乗った。彼の席だけはあったものの、自動車の中はあいかわらず身動きさえできぬ満員である。保吉はふだんどおりポケットに入れてある本を出した。でも、読書を断念した。それは・・・』
12月4日(日) 夏目漱石
1916年(大正5年)リウマチ治療のため、湯河原天野屋の中村是公のもとに転地療養しました。今回朗読に選んだ2つの作品はそこから10年ほど前に書かれたものですが、落語好きの漱石の
真骨頂ともいえる、まさに朗読にぴったりの作品です。
第3回「坊っちゃん」1906
漱石が高等師範学校(現在の筑波大学前身)の英語教師となって愛媛県尋常中学校(松山東高校の前身)に赴任し教鞭をとった経験が下敷きになっている作品といわれています。
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『親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしている坊っちゃん。下女の清だけは坊っちゃんを気に入り、可愛がってくれた。そんなある日、四国の旧制中学校の教師として赴任することになった坊っちゃん。次々と巻き起こる問題に坊っちゃんは・・・』
第4回「吾輩は猫である」1905
苦沙弥先生に飼われる一匹の猫「吾輩」が猫の視点で語る人間社会。江戸落語の笑いの文体と、漱石の英文学の教養とが一体となった漱石の代表作です。
主人公「吾輩」のモデルは、漱石37歳の年に夏目家に迷い込んで住み着いた野良の黒猫で、猫の「吾輩」の視点から、取り巻く日々の人間たちが描かれています。
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『吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ・・・!?』
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