頭の中にスクリーンを描く

「今日ひとりで来たの?」
「すごいじゃな~い?!」

彼は照れくさそうに頭をかく。

数ヶ月前、おかあさんに連れられて初めて参加することになった時
車から下りなかった彼。
駐車場でひとり待っていた。

翌月、おかあさんと一緒に入ってきた彼。
そうだ。
あの時も今日のように照れくさそうに笑っていたんだった。

次の月。
今度はおかあさんが外で待っていた。

そして、今日。
彼はついに、ひとりで電車に乗ってやってきた。
1時間半かけて。

自主練。
口の中だけでモゴモゴ。
途中から母音の口の形を確認しながら誘導。

おなかから声を出す方法。
例題がよほどおもしろかったのか
教室は笑いが絶えない。

短文の音読。
視認ー発声の繰り返し

日本語は表語文字のため
漢字からの理解が比較的容易。
ひらがなは音読記号。
この訓練は、認識のタイムラグを短くするとともに
なめらかな発声を目的としている。

長文。
配役を決める。
1回目は前述の練習と重なる。
2回目。状況の理解の共有。
意見を言い合う。
解釈にそって、言い回しを変換。
文字を書く。

視認ー発声の間に映像の構築を加える。
文字が息を吹き返した。

拍手。

積み重ね。
大事なことはやめないこと。

ひとつづつ殻をやぶっていく。
信じて見守る。

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

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