8月に賢治を朗読するとしたら・・・。トマト!実はタイトルから選んだのでした。夏のお話はあまりないのです。うちのトマトはまもまく収穫時期が終わりなのですが、夏の終わりに、と思って。
とても不思議なお話です。ストーリーテラーが二重に折り重なって、「私」は、こどもの頃のことを話している。こどもの「私」は、はちすずめの話を聴いている。はちすずめが、かわいそうな兄妹ペムペルとネリのことを話す。
はちすずめは、優秀なストーリーテラーだ。ペムペルとネリは「ほんとうにいい子だったのに、かわいそうなことをした」と何度も何度もつぶやく。こどもの「私」はどうしてかわいそうなのか知りたくてたまらない。それなのに、はちすずめは突然だまってしまう。はちすずめは、剥製なのだ。話す方が不思議なのに、だまってしまうことで、こどもの「私」は、わんわん泣き出してしまう。
博物館のおじいさんに叱られて、はちすずめは「銀のはりのようなほそいきれいな声で」また話し出す。
不思議な世界のできごとのよう。それなのに、その「かわいそうなこと」はあまりに現実的で、せつない。
私は、おとなの「私」と、こどもの「私」と、はちすずめと、声のストーリーテラーになって、ドラマティックリーディング。
新たな深み。それは、静かなさざ波のよう。
自分に戻った時、高揚感に包まれて、賢治、すごい!
ああ、なんてしあわせなんだろう。こんな作品に出会えて。
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