ほおずきがふるさとへ灯りをともす

お盆。ほおずきをいただいた。こどもの頃、ほおずきの皮をむいて中の実を出し空にし、ピーピー音を鳴らして遊んだ記憶がある。ほおずきは、お盆の頃になると実をつける。それまでひっそりと庭先の片隅に佇んでいる。控えめなのか、目立ちたがりやなのか、わからないけれど、気がつくと、鮮やかに色づいて、ここよ、ここよ、と合図するのだ。

古事記の中で、ほおずきは出てくる。須佐之男命が退治する八岐大蛇の目がほおずきのように赤いと書かれている。古来より日本に自生していたほおずきが、なぜお盆に飾られるのか。

ほおずきは、鬼灯と書く。お盆にご先祖様や精霊が迷わずに帰って来れるように、提灯に見立てて、仏壇などに飾られる。ほおずきの赤は灯りなのだ。そういえば、こどもの頃、お盆の準備でおばあちゃんと一緒に茄子や胡瓜に割り箸などを4本さして馬を作った。「ご先祖様がこの馬に乗って帰ってくるんだよ」と教えられ、どうやってどこからやってくるんだろう、とお盆になると家の中をぐるぐる見回したっけ。私のだいすきだった茅葺きのお家。いくつの頃だっけ。こどもの頃、自然と精霊と、動物たちと木々と、いろんなものがわたしのまわりにあった。そのお家はもうないけれど、心の中に、鮮明に、残ったままの、こどもの「時」。

ほおずきがふるさとへ灯りをともしてくれた。

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

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