藤村は、童話を書いていた

島崎藤村が童話を書いていたなんて、意外に思う人も多いでしょう。藤村は子どもたちのために、数冊の童話を残しています。そのうちの「ふるさと」は、藤村のふるさと信州木曽で過ごした子ども時代の藤村の、目でみたもの、体験したこと、感じたことを、子どもたちに話して聞かせる形で本にしたものです。

子どもの頃の藤村なのに、本の中で藤村は自分のことを「父さん」と言います。とても不思議で新鮮な感覚です。

藤村は、子どもの頃、木や、鳥や、馬とよく話をします。木や、鳥や、馬の声をよく聞いています。それは、爺やおばあさんや和尚さんが話すのとまるで一緒です。

私も子どもの頃のことをとてもよく覚えています。私のふるさとももうほんとうにいなかで、父の育ったその藁葺きの家に5歳の頃引っ越したのです。それまでは、田植えや稲刈りやお盆、お正月の度に連れていかれたのでした。ゴールデンウィークといえば、いなかで田植え。私はそれが楽しみで楽しみでしかたがありませんでした。土手を走り回って、水をはった田んぼに裸足で入っては、たまじゃくしを見つけて網ですくって、おとなたちは田植えですから、子どもの私達にはかまっていられません。だから、自由。ありとあらゆるあそびを見いだして、夢中になって、まっくろになって、日が暮れるのでした。

だから、引っ越すことが決まった時、うれしくて飛び上がったのです。だって、あの藁葺きの家ほど不思議がいっぱいつまったところがなかったんですもの!その話はのちほど。

藤村の「ふるさと」は、私のこどもの時と重なって、明日は、少女の私が朗読します。お盆の夏、帰省しているみなさんに、帰省しないみなさんに「ふるさと」をお届けします。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

コメント

コメントする

目次
閉じる