もつこと、もたざること

もつこと。もたざること。

持ち物に名前をつける。

境をつける。

庭。

国境。

自分のものと自分のものでないもの。

自分のものに権利を主張する。

地球はだれのもの?

月の光はだれのもの?

おれのもの?

ある日突然、気に食わないからおれのものにする。

おれのものにするために、正義を画策する。

かわいそうに、と思う。

孤独なんだ、と思う。

画策という邪悪なものと契約したら、しあわせは飛んでいって二度とあなたのもとにはもどってこない。

かわいそうに。

もちものをもったがゆえに、悪魔にこころを売り渡したあなたは、命尽きるまで、画策し続ける。

悪魔はあなたをたすけてくれない。

もちものをうしないたくなくて、画策しつづける。

死ぬまで。

帰り道、下弦の月が桜を照らしていた。

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

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