英語と日本語、どちらが言語トレーニングの成果が出やすい?

18年間、英語で仕事をしている方が、日本に帰国し、日本語で言語のリハビリを行っています。母国語が日本語ですから、表意文字の日本語は味方になってくれたのではありませんか?と尋ねると、最初は、簡単な会話だったので、日本語で話すことが楽だったそうなのですが、途中から、日本語で話すことが難しくなったというのです。とても、興味深くていろいろ質問しました。教室には同じように、英語を仕事に使っていた方が多く、みなさんもうなずきながら聞いていました、つまり、英語の方が、言いたいことが伝えやすいというのです。日本語は、対人関係、シチュエーションによって、尊敬語、謙譲語、丁寧語があり、急性期が過ぎて、そのことがわかってくると、かえって話すのが難しくなったということでした。また、目から入ってくるスペルも、意味理解と結びついているそうです。ただ、わかっているのに書けない、と不思議がっていました。発音は、ある一定の法則で抜ける音があることがわかったとも言っていました。日本語でも、それはあります。私がとても驚いたのは、漢字が失語症の方にとって、強力な味方であるのに対し、英語のような表音文字は、意味をなさないはず。英語圏の方は文字と意味をむすびつけるのは困難だろうと思っていたら、そうではなかったということです。長い間、英語を日常会話やビジネスで使用している方は、スペルも、形としてとらえ、意味と結びつけているのでは、と考えます。音の抜けに関しては、正しい音韻を残韻させることを根気強く行っていくことがよいでしょう。これは、万国共通なのかもしれません。教室では、私自身、勉強になることばかりです。みなさんは、ほんとうに、すばらしいです!

次回、12月26日はいよいよクリスマス朗読会です。

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今年のクリスマス朗読会の出し物が決まりました!

毎年12月の最後の教室は朗読会を行います。今年も12月26日のボイストレーニング教室はクリスマス朗読会をします。今年の出し物は「きつねのでんわボックス」にしました。配役を決めず、朗読をリレーでつないで物語を完成させます。85ページを4名でつないでいきます。今日は、ひとりひとりにアドバイスをしていきました。2つの単語が並んだ時の音のつなぎ方がぎくしゃくして気になるという方には、逆にそのままでいいのですと伝えました。視覚情報に音韻の情報処理が追いついていないと思われるので、それは経験値を高めれば必ず処理能力は上がってくるのであわてなくていいこと、朗読は言葉に味のある発声といいますか、読み方が、かえってひとを惹きつけることを伝え、間をとってゆっくり言葉を発してくださいとアドバイスしました。文字認識よりも聴覚情報処理がすぐれている方には、録音したデモを渡しリピート練習してもらうことにしました。難しいことを正しくない発声で繰り返すよりも、正しい情報を脳内に入れていただいた方がその方にとって近道だからです。一本調子になってしまう方には、感情を入れた読み方を何度もリピートしてもらいました。最初は恥ずかしがっていましたが、徐々に、役になりきっていきました。朗読には正解はありません。それぞれが、それぞれの表現をして物語を作り上げていくのです。あと1回教室での練習をして本番となります。どんな作品になるかとても楽しみです。

次回は、12月12日です。

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カ行の音読

広尾教室では、「よくわかる失語症ことばの攻略本〜音読編」(エスコアール出版)をテキストに、口の開け方、舌の位置の確認、聴覚情報と音韻情報のマッチング、視覚情報と音韻情報のマッチングを行っています。今日は、カ行の音読を行いました。まず始めに、即読をします。情報処理にかかるタイムラグを短縮する練習です。この時、正しい音韻と結びつけることが大事なので、必ず私と一緒に行います。残韻させるために繰り返します。次に、テキストを閉じ、私の発音する音情報を繰り返します。これは何度も行います。意味の具象化も同時に行うことができる方はさらに残韻が有効になります。音処理だけに費やしてももちろんいいのです。これは脳を意図的に操作するといいましょうか、音韻情報と運動機能のマッチングを強化するねらいがあります。圧倒的にショートカットして正しい発声になった方もいて、本当に脳の可能性に驚かされるばかりです。この方には家で読み込んで練習しすぎないようにアドバイスしました。なぜなら、正しくない残韻をしてほしくないからです。教室で受講できる方は、私の正しい発音を繰り返すことがなによりの近道です。このテキストには、「はっきり話すとは」「音読がなぜいいの?」「漢字を攻略〜ふりがなを味方につけよう」「平仮名を攻略〜音読名人に!?」「カタカナを攻略〜音の記憶を逆手にとって」といった項目があります。視覚情報と音韻情報が結びつきにくい方へのヒントを紹介しています。悩んでいる方はぜひ手にとってみてください。

「よくわかる失語症ことばの攻略本〜音読編」(エスコアール出版)

次回は、11月28日です。

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「脳梗塞・失語症から言葉を取り戻すまで」11 〜 SLTAにとまどう

私の話をひと通り聞き終えると、先生はA5サイズほどの紙を手元に引き寄せた。  3cm四方のマス目の中には、動物やくだもの、山、太陽、靴下などといった、さまざまな絵が描かれている。言語障害の程度を調べるため、2回目以降のリハビリに使う道具だという。こんな幼稚園児の能力テストみたいなことをしなければいけないのだろうか。そんな悲しい思いが顔に出てしまったのだろう。先生は、

「検査に使うものなんですけど・・・・・。沼尾さんには必要なさそうですね」

と言ってくれた。

私は過敏になっていた。自分の病気を自覚して以来、まわりの人がみんな、私を「失語症なのね」「うまく話せないのね」という目で見ている気がした。まるで子供相手のような調子で話しかけられると、「私、すぐに言葉が出てこないし、わからないこともあるけど、それ以外は正常なのよ。感情だってフツウにあるのよ。幼児扱いしないで」と言いたくなった。私のプライドはすでに何度も傷ついていた。しかし、先生は、私の気持ちをすぐに察してくれたようだった。

あっという間に検査用の紙は引っ込められ、普通の会話に戻った。そして、最後に、

こう言った。

「どうでしょう。明日から毎日、来ることができますか?」

「はい、どうぞ よろしくお願いします」

と私は素直に頭を下げた。

初めて目標ができた。毎日ここに来よう!       これから、すべてがうまくいきそうな気がした。

 

リハビリ2日目。午後、約束の時間に、言語療法室に向かう。点滴の管はつながっていて、ガラガラと点滴スタンドを転がしながらの移動だ。

前日にたどった道を思い出しながら、のんびりと歩けることがうれしい。病院内とはいえ、少し長めの距離をひとりで歩くのは、これが初めてだ。

連絡通路にさしかかった。通路は大通りを少し入った道路の上に渡されていて、両側の窓からは外がよく見える。ときどき車が足の下を走り抜けた。白い日傘をさした女性も歩いている。そこには″日常〞があった。病院から一歩も外に出ていない私は、ずっと外界の空気を吸っていない。窓から見えるのは、都会のビルの谷間の、ほんの狭い一角。この窓の外側に日常と現実がある。

「私がこうしているあいだにも、世の中はフツウに存在し、フツウにまわっているんだ」

それはとても不思議な感覚だった。

〈続く〉

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目標はひとそれぞれ

広尾教室は、受講生のみなさんそれぞれの目標をカリキュラムに取り入れて進めています。それは、ひとりひとりに向かうべき道があるからです。同じではありません。それは当然のこと。歩んできた道も違えば、得意も不得意も違います。講演では大多数の方へ最大公約数としての言語ボイストレーニングのお話をしますが、少人数での教室は、目標へ遠回りをしてほしくないのです。できるだけ、目標にストレートに到達してほしい。そのために、それぞれに教える方法も違っています。そんな中、みなさんに共通しているのは、自信をもって話したいという思いでした。滑舌とひとくちにいいますが、これも、ひとそれぞれ、今まで話してきた癖や、動かしにくくなった箇所も違います。でも、発声の基本は同じです。そこで、今日から、「よくわかる 失語症ことばの攻略本 音読編」(エスコアール出版)をテキストにし、進めていくことにしました。五十音を短文で練習していきます。まずは、即読、次に復唱、最後に、もう一度、意味理解して、音読。これを繰り返していきます。1ページ終わったところで、みなさん、それぞれにもう一度、音読したい文を選んで、本人の発声のまどろっこしさを解消していきます。家でできる練習方法もお伝えしました。毎回思うのですが、みなさん、本当に一生懸命です。お伝えしたことを必ず実践してきます。みなさんの目標を実現させるために、わたしも、全身全霊で向き合います!一緒に。

次回は、11月14日です。

 

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