みなさんの言葉は宝もの

失語症のひとが「もう一度仕事をしたい」と言った時、2つの意味があります。ひとつは「仕事に戻りたい」。これは復職ですね。もうひとつは、「仕事に就きたい」。これは就職です。今日、フリートークで近況報告をしてもらった時、焦っているんですと話してくれた方がいました。なにかしなきゃと思ってもなにができるのか考えつかないし、前はこんなんじゃなかった、もっと動けたのに動く気が起きない、でも、仕事をしなければ、と焦ってばかりいる。そう言葉を振り絞って伝えてくれました。復職できた方は、以前と同じようには働けなくて最初は大丈夫なように装っていたけれど、しまいに疲れてしまい、出来ないことが分かってもいいやと開き直ったら、周囲も遠慮せずに「今日はろれつがまわってるね」などと声をかけてくれるようになった。オープンにして気が楽になったと話してくれました。復職できた方の悩みと就職の悩みは全く違いますが、日々葛藤していることは同じなんですね。家族との関係性を話してくれた方もいました。以前と同じように子どもが接してくれない、または、自分自身が接することができなくなってしまった。ご自分の子育ての経験をアドバイスしてくれた方も。思い悩むのはあたりまえ、たくさん悩めるだけ悩めばいい。失語症の苦しみは他の人にはぜったいわからないと思うけれど、それでも、たくさんのひとに話をしよう。自分の思いを伝えよう。その時返ってきた言葉に気づかされることや、違って視点で物事が見えるきっかけになることも。懸命に伝えてくれました。

たくさんの悩みを抱えて教室に足を運ぶみなさんは一歩を踏み出しています。自分の言葉でこれだけのことを伝えることができる。たくさん泣きましょう。一緒に笑いましょう。みなさんの言葉は宝ものです。

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

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