電話で問い合わせの実践トレーニング

「数字がまったくわからないんです」。初めて参加の方がご自分の状況を話してくれました。文字を見ればわかるのだけれど、音で聞いただけでは理解として残ってくれない。他の受講者のインタビューに懸命に言葉を紡いで答えてくれます。「ぜんぜんしゃべれない」と初めて参加される大抵の方は仰います。でも、ちゃんとしゃべっているんです。伝えようと懸命に言葉の箱から引っ張り出す作業こそ、今まで使われていなかった道路を開通させる工事です。すぐに心に浮かんだイメージを言葉にすることができないもどかしさのことを「しゃべれない」と言っていることはとてもよくわかります。大事なのは、どのような方法でも、たとえ時間がかかっても、相手に伝わることです。ですから、その努力を続ける限り、工事はゆっくりとでも進みます。失語の状態はほんとうにひとりひとり違うので、その方に合った工事のしかた、あまり、工事というとなんだか荒々しい感じがしてしまいますね。その方に合ったトレーニングが回り道をしないで目的に向かうことができます。数字の認識が難しいと買い物や銀行など日常生活に不便ですので、次回、実践に基づいた買い物のカリキュラムを取り入れていくことにしようと思いました。

電話応対は中級編に入ってきました。今日は「行政への問合せ」を行いました。問合せの内容は「近くの福祉施設を教えてほしい」というシチュエーションです。定型文はテキスト化してあるのですが、具体的な目的は空欄にして各自の言葉で伝えてもらうことにしました。ご自分のことなのでどんな言い方でもいいわけですし、ハードルは高くないと思っていたのですが、みなさん、そこで頭を抱えてしまいました。なんと言っていいのかわからないと言うのです。そこで、その福祉施設で何をしたいのか、その目的を正確な文章ではなく、短い言葉で言ってみてくださいと伝え、そこの部分だけ予行練習をしました。すると、「早くしゃべれるようになりたい」「仕事復帰するための練習がしたい」「言葉の練習がしたい」等々、目的が明確になりました。問合せの電話では、短い言葉で目的を伝えるために、あらかじめそこの部分だけメモにしておくこともいいと思います。とっさに言葉にならなくても、メモを見れば文字によるイメージもわいてくるので、落ち着くことができます。電話応対は実際にスマホを使って行っています。みなさん、経験を積んでだいぶ慣れてきたように感じました。

次回は、7月11日です。

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

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