医療従事者「目上の患者さんにもわかりやすく話しかけるよう心がけている」
患者 「どうして幼児言葉で話しかけるんだろう」
医療従事者「ご本人は理解力が乏しいから家族に説明している」 患者 「なぜ、当人の私に説明してくれないの」
医療従事者「時間内に端的にお話している」 患者 「わたしの話を聞いてくれない」 |
「そんなつもりはないのに」―
善意でかけた言葉や行為が患者にうまく伝わらない。
ひとつには医療の場が、日常生活と全くかけ離れた特殊な場であることがあげられます。
医療従事者間では日常的に使われる医療専門用語が時に身体的差別用語であり患者にとってはとても悲しい言い方に聞こえてしまうのです。医療従事者と患者との間に共通言語がないことは重要な問題といえるでしょう。
また、患者は「なんて失礼な言い方をするのだろう」と思ってもそのことを伝えにくいという声を多く聞きます。医療従事者×患者間のパワーバランスも一因といえます。
「言葉」によって、正しく「伝える」。相手の伝えたいメッセージを正しく理解する。「伝える・伝わる」=信頼関係を築く。それがコミュニケーションです。
聞き方、話し方、訴え方、伝え方、見え方、相手の気持ちを汲み取る力。コミュニケーション力の向上を図ることが医学教育の場でも喫緊の課題となっています。
私は、2006年に突然脳梗塞を発症し、失語症となりました。フリーアナウンサーとして言葉で伝達する仕事をしていたので、この突然のコミュニケーション不能の状態は生きる意味を全く失ったと言っても過言ではありませんでした。そんな時、一番身近に接していたのは医師や看護師、言語聴覚士といった医療に携わる人達でした。入院中、私はかけ言葉のとらえ方は、置かれた状況や心理状態によって大きく変わります。時に、正しいと思われる言葉や行為には、患者の前向きな気持ちをそぐのと、希望の光を差し込むのと、両方の意味を持っていることを知っていただければ嬉しいです。一番大切なのは患者に寄り添うこと。もし、その時、意に反して傷つける言葉をかけてしまったら、誤解を解く努力をすることが大切です。会話を重ねること=コミュニケーションは育てることができます。正しい情報共有をするためには相互に努力することが必要不可欠です。問題は、失語症が自分の気持ちを言葉で伝えることが困難な障害だということです。コミュニケーションのツールは言葉だけはありません。表情、態度なども重要なアイテムなので、そういった情報を見逃さないようにすると、本当の気持ちを汲み取ることができると思います。
これから医療に従事するみなさん、今医療の現場にいるみなさんが、コミュニケーションで悩んだり落ち込んだり、イライラしたりした時、少しでもお役に立ちますように。
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