私が失語症のひとのために朗読CDを作った理由

どうして私が失語症のひとのためにこのCDを作ろうと思ったのかをお話しします。

声を出すこと、話すこと、は言わずもがな、伝える手段としてとても大事なことです。

ひとと会話すること、それは、なににも増して。でも、往々にして、あまりひとと話をしたくなくなってしまう。うまく話せないし、言われたことを理解できないし、言ってもわからないひとと思われることが嫌だし、恥ずかしいし、疲れるし、そんな思いをするくらいなら話さない方がいい、と。

会話は、話をする相手が失語症のひとと話をするスキルがあるとないとで、有効なトレーニングになるかならないかわかれるように思います。1つの質問で一つの答えを導き出す。意味と言葉のマッチングを迂回通路で導く。待つ。正しい発音で、自然に繰り返す。それらのスキルです。それらのスキルを持っていないひととただ会話しても、疲弊したり、ストレスになったり、結果、トレーニングには繋がりません。

朗読は、文字を読み、理解して、声に出します。文字を読むということは、視覚の情報です。情報を正しく理解すると、それに適合した発音、アクセント、イントネーションで、音読できます。さらに、高低、強弱、間、緩急、といったプロミネンスを動員すれば、表情豊かな音読となります。さらに、朗読すると、自分の声が聴覚の情報となり、意味理解が深まるとともに、名称記憶の手助けをしてくれます。会話の言葉の迷子も同時進行でプラスに働くでしょう。それで、真面目な性格のひとはいっしょうけんめい練習します。それはすばらしいことです。でも、正しく発音できていないまま練習を重ねると、その情報が上書き保存されて、何回練習しても、正しくない発音を繰り返すことになります。

私は今まで、さまざな失語症の方にボイストレーニングをしてきました。「しっかり声を出せるようになりたい」「上手に会話できるようになりたい」「仕事を円滑にできるようになりたい」「言葉がすぐ出るようになりたい」などなど、ひとりひとり悩みも目的も違うのでその方法はその方に適したものを重ねてきました。その中で、最も正しい発音、滑舌、イントネーション、なめらかさを獲得したのは、私の後に続いてリピートする方法でした。文字も見ず、音で聴いてそのままリピートするのです。舌の位置や口唇の形、呼気の当て方など、その方がわかりやすいようなやり方で改善するトレーニングも行いますが、ずば抜けて、「すごい!」「知らないうちにできちゃった!」と、ご本人も驚いて笑顔になるのは、朗読を、私に続いてリピートするトレーニングでした。

考えてみると、正しい音声を繰り返し聴くことができるツールや環境は今までなかったのではないでしょうか。

私も今まで何冊か音声ガイドのついたテキストを作ってきましたが、テキストだと操作に手間取ったり、文字を読まなければなりません。そこで、今回初めて、CDを制作することにしたのです。

わかりやすい題材、第1回めは、「赤ずきんちゃん」にしました。

あえて、スピードを落とさずに、そのかわり、一語、次に二語、次に、句読点まで、最後に表情豊かに。一音一音区切って読むのではなく、流れるように、歌うように、リピートしていきます。

声を出せる環境にない時は、このCDを聴くだけでもいいです。耳で聴いて口ずさむようになったらしめたもの。とにかく、まねっこしてください😊

私とオンラインやオフラインで言語ボイストレーニングするのは、週1、2週に1回、月1でいいのです。CDを聴いて、声に出して私の後に続いてまねっこしてください😊

楽しいですよ😄 楽しいのがよいのです。

脳が喜びます!

大事なことを書き忘れました。なにより、失語症になった私自身が、朗読によって、言葉を取り戻し、生きる喜びを得ました。今の私があるのは、朗読のおかげなのです。

だから、がんばって生きている、あなたが、笑顔になってくれたら、ほんと!うれしいです❗

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

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