訓練の意志決定が積極性を引き出す

今日は区の福祉関係の方2名と失語症の方が見学に訪れました。いつもどおり、まずは身体の準備運動でリラックスし、続いて顔の運動、呼吸法を時間をかけて行います。少しづつ進化しているのは、運動の順番も参加しているみなさんに決めてもらうこと。そうなんです。どんなことも受け身ではなく、自分の意見や意志をはっきり言って行動の選択をする、その訓練をしてもらいたいのです。顔の運動、どこから始めましょうか?この問いかけに最初みなさん、ぽかんとしています。そこで、指名して聞いてみました。顔のどの部分?具体的に問いかけます。すると、「あっ、じゃ、目」。わかりました、では目の運動いきましょう。こんなふうに。このあとの大声発声練習でも、パートナーを選ぶのは本人達にまかせます。今回女性がひとりだったので、そこは女性から選んでもらいました。その時、選んだ理由も言ってもらいます。「初めての方なのでUさん、お願いします」。照れながらUさんもうれしそうな顔。じゃあ、シチュエーションはどうしましょうかねえ。「恋人どおしは前回やりました」そうですねえ、20年ぶりに再会した同級生はどうですか? うん、うん! みなさんの同意が得られました。そこで、あいさつの言葉は「ひさしぶり!」 こんなふうに自然に自分の意見を言えることは、精神的に追い詰められがちな失語症の方の安定したベースが構築されて為し得るのです。さらに、この後、前回に引き続いてリズム発声をやるか、数字訓練としてカレンダーを題材にした受け答えをやるか、聞いてみました。すると、やったことないことやりたい!という意見。そこで、10月カレンダーをみなさんに渡し、私が質問することにしました。これはおおむね、みなさん答えられます。カレンダーや時計はもっとも日常目にするもので、大丈夫ですという意見でした。その意見から、今日は滑舌集中訓練を行うことに変更したのです。

どの行をやりたいですか?これも聞いてみました。すると、「ラ行がいいです!」との声。そこで、「ら」のつく言葉をひとりずづ言ってもらい、その言葉の発音をチェックしていったのです。これも、わたしのテキストではなく自分の提案した言葉ですから、それぞれいつにもまして真剣に取り組んでいることが見受けられました。

このように、意志決定を自分でする訓練はリハビリを積極的に行う姿勢にもつながり、結果成果の評価も自分で行えるようになります。 わたしの役割は自主性のサポートなんだということを最近とても感じます。最終的に乗り越える主役は本人なのですから。ただし、常に寄り添っていきたい。そう思うのです。

朗読 「クリスマスキャロル」

 

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

コメント

コメント一覧 (1件)

  • こんにちは。はじめまして
    岩手県の50代の女性です。私はパートナーがこの8月に脳出血で倒れ、失語症でリハビリ入院3ヶ月目です。
    地方なので退院に向け生活保護やアパート探しをしていますがこのような
    訓練を受けて貰いたいのですがなかなかこちらにはありません。
    私自身が学ぶのも必要ですしやりたいのですがどんな勉強をして行けば
    よろしいのでしょうか?教え頂きたくおねかします。

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