第一回 沼尾ひろ子 朗読の世界 「フランダースの犬」

第一回 沼尾ひろ子 朗読の世界

題目:「フランダースの犬」

脚本:沼尾ひろ子

会場:KANOUYA_BASE

冷静沈着な元パイロットの方が感動して涙してくださいました。

ひとりで朗読する予定で脚本を書き練習していると、「私に伴奏をやらせてください」とひとみさんからの嬉しい提案。

その瞳はまっすぐに私を見て、有無を言わせぬ力強さがありました。

やりたいという気持ち。それがどんなに大切か、私は思い出しました。

ひとに言われてやってみるのと、自分の意志でやるのとではまったく違うということを。

13年前、取り巻く世界はぼんやりとし、周りが何を言っているのかよくわからない。雑誌や新聞の文字が頭に入ってこない。当然、文を声に出して読むこともうまくできませんでした。テレビを観てもわからないし、メールも打てない。何か伝えたくても、言葉が浮かんでこない。

周りは何も変わっていないのに、私はポツンとひとり立ち尽くして途方に暮れていました。これからどうやって生きていけばいいのか全くわかりませんでした。もう大好きな仕事はできないんだとわかっていながら、認めたくない自分もいる。そんなつらい気持ちを訴える言葉が迷子になって伝えることもできず、みじめで、行き先もなく真っ暗闇の海を漂うような日々でした。

リハビリはさらに駄目な自分を再認識させられる場でもありました。こんなこともわからないのか、こんなこともできなくなってしまったのかと。だから、一度全部やめてしまいました。

そんな私が変わったのは、「フランダースの犬」との出会いでした。誰とも会いたくない私を誘い出してくれたのが朗読サークル。楽しそうに練習しているみなさんを見ているだけで心が氷解していきました。でも、それだけではなかったのです。欠員の代役を突然頼まれて私は窮地に陥りました。できない。無理。このまま帰ってしまいたい。でも、一人で帰ることもできない。ああどうしよう。たった3つの短い台詞。こんなに待ち望まれてるんだ、やってみよう。ただの練習の代役。こんなにドキドキしたことは生放送の現場でもありませんでした。できるかどうかわからない恐ろしさ。第一声がちゃんと声になって教室に響いた時、みなさんが、喜んでくれた時、うれしくてうれしくて涙が出そうになりました。今までたくさんのつらい涙を流してきたのに。今まで経験したことのない喜びで全身が満たされました。この時の感動を一生忘れません。

人生のすべてをあきらめかけた私に、『フランダースの犬』 はことばで伝える喜びをもう一度気づかせてくれました。

13年後、自分の大好きな場所KANOUYA_BASEで大切な朗読会を開始しました。

みなさんに朗読の素晴らしさを届けたい。みなさんに朗読を通して元気になってもらいたい。そんな思いでひとことひとこと言葉を紡いでいきます。

月に一度KANOUYA_BASEで朗読会を開催します。みなさん聴きにきてください。

そしてお呼びいただければどこへでも朗読をしに参ります。

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

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