100%不可能を宣告された私

自分の人生が自分の意志とはまったく関係のないところで舵取りされていく。背中の翼をもぎられたー 私が体験したことは、まさにこの言葉がぴったりでした。中学生の頃から文を書くことが好き。高校時代は新聞部。大学時代はマスコミ業界に就職しようと決め、卒業後、書くことより言葉を発することで情報発信しようとアナウンサーになった。あの日まで、自分の進路、目標を決め、そのためになにを為すべきか考え行動してきました。絵に描いたようなライフコーチングのスキルを自で実践してきたのです。風を切って先頭を歩く女戦士のように、順風満帆な人生を送ってきました。

生番組のナレーションを担当していたある日。突然の脳梗塞。幸い処置が早かったため命に別状はありませんでした。しかし、意識の混濁から目覚めた私を絶望の淵に突き落としたのは医師からの宣告でした。「あなたは失語症です」

よりによって、梗塞巣は言語野を司る左側頭葉に発症したのでした。

私は言葉を操る仕事を生業としていたにも関わらず、一瞬にして言葉を失ったのです。自分の名前すら言うことができなかったのですから、仕事復帰は100%不可能でした。

生まれて初めて、自分の意志とは関係のないところで突然人生の歯車が動いたのでした。しかも、まったく望んでいない方向に。

「生きててくれてよかった」という家族の言葉がむなしく耳に響いたことを覚えています。しゃべれない人生なんて死んだ方がましよ、と心の中で叫び続けていました。身体の麻痺はどこにもなかったため見た目は健康体そのものでしたが、言葉を発することに関して今まで培ってきた自信は粉々に砕け散ったのですから、惨めで情けなくて、外出することさえ苦痛の日々でした。

そんな私が「生きる」喜びを再認識し、今、毎日を生きています。

一番むずかしいこと。それは、心の蓋を開けることです。「どうしたらいいのかわからない」「どうせ無理だ」この2つの蓋をまずは開けてみましょう。

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この記事を書いた人

ナレーター/朗読家/司会/声とことばのトレーナー

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